敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
「ありがとうございます。無理をしていたのは、誰かさんのせいでもありましたが……」
最後に少しだけ意地悪が言って、チラッと清十郎さんを見る。
泉美さんにポンと肩を叩かれた清十郎さんはますます居たたまれなそうな表情になり、ゴホンと咳払いした。
「わかっている。美来を傷つけたぶん、泉美を幸せにするのが俺の務めだ。……俺のような者を慈悲深く許した、城後叶多の姿を見ていてそう思った」
「清十郎さん……」
叶多くんの優しさが、傷だらけだった彼の心に響いたのだ。
世界中の人々の、そして国同士の橋渡しがしたいと願い、日々誰かの幸せに心を砕いている彼だからこそ、できたことだと思う。
改めて叶多くんを尊敬するとともに、清十郎さんに小さな嫌味をぶつけてしまった自分はまだまだ彼の人間性には遠く及ばないなと、少し反省した。
その日の夜、ベッドに入り眠る準備をしていたところで泉美さんからメッセージが入った。連絡先は、彼女が八束家を出て行くときに交換していた。
【今日はお会いできてうれしかったです。それと報告ですが、赤ちゃん、来てくれました。心拍も確認できたので、清もホッとしたみたい】
嬉しい報告にこちらの胸も温まる。泉美さんと妊婦仲間になれたのも心強い。