敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

 祭壇の前にたどり着くと、これまで育ててくれた父の手を離し、叶多くんの隣に立つ。

 ふたりで愛を誓い、リングボーイの翼が運んできてくれた指輪を交換する。

 誓いのキスは、翼を挟んで三人で。そういう予定だったのだけれど、翼の頬から唇を離したほんの少しの隙に、叶多くんに直接唇を奪われた。

「ちょ、ちょっと……予定と違う……」
「せっかくの結婚式だ。俺のお姫様にキスしてなにが悪い?」

 私にだけ聞こえる声で囁かれ、叶多くんらしからぬ強引な甘さに胸を撃ち抜かれる。

 私の旦那様はなんてカッコいいのだろうか……。

 悔しいくらいに心を掴まれたまま式は終了し、家族三人そろって、フラワーシャワーの中をゆっくりと退場した。 

 披露宴でのお色直しでは、情熱の国をイメージした赤いドレスを着た。

 大きく開いた背中や広がりを抑えた裾のデザインがセクシーで、こちらは叶多くんが選んでくれたものだ。

 叶多くんと翼は明るいグレーのタキシードに着替え、三人で高砂に並ぶ。

 披露宴の食事は、あのトーレスシェフが手掛けた渾身のスペイン料理。なんと、彼はこのホテル内にレストランを出店しているのだ。

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