敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
『娘のようにかわいがっているお嬢さんの結婚式の料理をお願いしたい』
シェフにそう頼んでくれたのは、家政婦の妙さんだ。
実は、父たちを和解させたあの動画を見た妙さんがスペインの彼に連絡を取り、ふたりはまた交流するようになったそう。
長年八束の名に苦い思いを抱いていた彼もわだかまりが解け、今度こそ日系ホテルに自分の店を出そうと決心してくれたのだとか。
妙さんと恋愛関係に戻ったかは定かではないけれど、時々連絡を取り、大好きな料理の話に花を咲かせているみたいだ。
「パパ、あーん」
「あー……って、ちょっと待て、大きすぎ――もごっ」
ファーストバイトでは翼が私、叶多くんの順で口にケーキを運んでくれたが、大きなスプーンで叶多くんに差し出したひと切れが多すぎて、会場がどっと笑いに包まれる。
叶多くんも苦笑していたが、翼はどこ吹く風。
最後には自分も口の周りをクリームだらけにして、「美味しい!」とにっこり。かわいい翼のお陰で終始ゲストたちも和んでくれた、楽しい披露宴だった。