敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
このまま無視していたら、余計に彼を怒らせてしまう。
でも、彼の言うとおりに居場所を教えて日本に連れ戻されたら、一生清十郎さんの妻として生きていかなくてはならない。
私のことを、許嫁どころか人間とも思っていなさそうな彼と夫婦になるなんて……やっぱり考えられない。
「また彼から?」
難しい顔でスマホを睨んでいると、テーブルの向こうから叶多くんが聞いてきた。
「うん」
「差し支えなければ、見てもいいか?」
「……どうぞ」
スマホの向きを変え、スッと彼の方へ差し出す。清十郎さんからのメッセージを一読した彼は険しく目を細め、それから私を見た。
「美来。今日と明日は、やっぱり俺のそばにいろ」
「えっ?」
「きみが結婚を渋るのも当然だ。美来の意思を尊重するよう、俺から彼に説明する」
「叶多くん……」
家族はもとより、学生時代から親しい友人たちですら『紫陽花楼の若旦那に嫁ぐなんて羨ましい』なんて言っているので、私の迷いや不安を理解してくれたのは彼が初めて。
ひとりでも味方がいるとわかっただけで、心持ちがさっきまでと全く違う気がした。
……やっぱり私、このまま運命に飲み込まれたくない。