敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

 このまま無視していたら、余計に彼を怒らせてしまう。

 でも、彼の言うとおりに居場所を教えて日本に連れ戻されたら、一生清十郎さんの妻として生きていかなくてはならない。

 私のことを、許嫁どころか人間とも思っていなさそうな彼と夫婦になるなんて……やっぱり考えられない。

「また彼から?」

 難しい顔でスマホを睨んでいると、テーブルの向こうから叶多くんが聞いてきた。

「うん」
「差し支えなければ、見てもいいか?」
「……どうぞ」

 スマホの向きを変え、スッと彼の方へ差し出す。清十郎さんからのメッセージを一読した彼は険しく目を細め、それから私を見た。

「美来。今日と明日は、やっぱり俺のそばにいろ」
「えっ?」
「きみが結婚を渋るのも当然だ。美来の意思を尊重するよう、俺から彼に説明する」
「叶多くん……」

 家族はもとより、学生時代から親しい友人たちですら『紫陽花楼の若旦那に嫁ぐなんて羨ましい』なんて言っているので、私の迷いや不安を理解してくれたのは彼が初めて。

 ひとりでも味方がいるとわかっただけで、心持ちがさっきまでと全く違う気がした。

 ……やっぱり私、このまま運命に飲み込まれたくない。

< 25 / 220 >

この作品をシェア

pagetop