敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

「叶多くん、お願いしてもいい? 恋人のフリ」

 決心したように叶多くんを見つめ、語りかける。

 父や清十郎さんには嘘をつくことになる。でもきっと、自分の心に嘘をつくよりはましだ。

「もちろんだ。よろしくな、美来」
「こ、こちらこそ……よろしくお願いします!」

 フリとはいえ、恋人として改めて挨拶を交わすのはなんだかくすぐったい。

 とはいえ人助けのような気持ちで恋人のフリをしてくれるのであろう彼にドキドキしたって仕方がないのだから、友達のような感覚で接するのが正解……?

 自問しながら口に運んだシナモンロールの最後のひと欠けは、不思議とさっきより甘ったるく感じられた。


「せっかく時間があるなら、トレドまで足を伸ばそうか」
「ええ! スペインは何度か来ているけど、トレドは行ったことがないの」

 カフェを出たところで、叶多くんがこの後のデートプランを提案してくれた。

 トレドはマドリードの南に位置し、高速鉄道を使って約三十分のところにある古代都市。三方を川に囲まれ中世の面影を残す旧市街は、世界遺産に登録されている。

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