敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
私は窓際の席、叶多くんはその隣に座り、走り出した列車の窓から外を眺める。青々とした緑が広がるブドウ畑がどこまでも続いている風景がのどかだ。
スペインはワインの世界的産地だから、あのブドウもきっとワインの原料になるのだろう。
「なんだかワインが飲みたくなっちゃう」
「飲めるのか? 初めて会った頃はまだ未成年だったから、酒を飲ませちゃいけない気がしてた」
「失礼ね。私だって、いつまでも高校生のままじゃないわよ」
「そうだな。じゃ、今夜はどんな酒で酔わせてほしい? スペインはワインもブランデーもリキュールも、何でもそろってるぞ」
もう子どもじゃないと自分からアピールしたのはいいが、叶多くんの質問がハイレベルすぎて困ってしまう。
ブランデーとリキュールの違いもわからない私に、色っぽい眼差しを向けてそんなこと聞かないでほしい。
「叶多くんのおススメなら、なんでも」
そんな風に言ってごまかすと、叶多くんはクスッと笑う。