敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

 部屋の明かりを点け、ふうっと息をつく。ナチュラルな木製家具と、小花柄のカーテンや寝具カバーで揃えてある十畳の部屋は、旅行に出てくる前となんら変わりない。

 そう思いかけて、ふと机の上のデスクトップパソコンに目が留まる。

 忘れていたけれど、清十郎さんにメールを覗かれたのよね……。

 思わず机に近寄って、パソコンの電源を入れる。すぐにパスワードの入力画面が現れ、私は【8239】と入力した。

 やつ(82)みく(39)るの名前を数字に当てはめただけなので、簡単すぎただろうか……。

 覚えやすいので変えたくないが、他人にパスワードを解除されてしまったのは事実。

 今度時間があるときに新しい数字の組み合わせに変えようと決め、一旦パソコンを閉じて部屋を出た。

 一階に下りてリビングの戸を開けた瞬間、パリン、と食器が割れるような音がした。

 慌てて音のした方へ駆け寄っていくと、清十郎さんが腰かけるソファの足元で、紅茶のカップが割れていた。

 ソファの横では泉美さんが真っ赤な顔で口元に手を当て、立ち尽くしている。
 
 どうしたんだろう。割れたカップを片付けもせず……。

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