敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

「泉美さん?」

 彼女が心配でそっと顔を覗くと、彼女はハッとして私に頭を下げる。

「申し訳ございません、私の不手際です。すぐに片付けて新しいものを用意します」
「清十郎さん、お怪我は?」
「俺はなんともない」
「本当に申し訳ございません……」

 今にも泣きだしそうな顔をして、泉美さんが一旦この場を離れていく。私は割れたカップを避けるようにして清十郎さんの対面に座り、「なにがあったんですか?」と尋ねた。

「別になにも。彼女の手が滑っただけだ」
「そうですか……珍しい、泉美さんの仕事はいつも丁寧なのに」

 妙さんは私が生まれる前から八束家にいるベテラン家政婦だが、おおざっぱなところがある。それに対し、五年前にこの家に入った泉美さんはどんな仕事も丁寧なので、いつも感心していた。

「それより、美来は自分の心配をした方がいいんじゃないか? 八束社長を説得するのは一筋縄じゃ行かない」
「わかっています……。でも、諦めません」

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