敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
話しているうちに泉美さんが戻ってきて、ゴム手袋をした手で割れたカップの欠片を拾ってビニール袋へ入れ、仕上げに掃除機をかける。
最後に紅茶がこぼれた床を丁寧に拭くと、新しい紅茶を淹れるため、キッチンの方へ駆けていった。
その一部始終を見ていると、なんとなくだがやはり彼女の様子がいつもと違う気がした。
「――美来!」
紅茶を飲みながら、清十郎さんととくに会話のない時間を過ごすこと数十分。いつもよりだいぶ早い時間に帰宅した父が、血相を変えて私たちの元へやってきた。
オールバックにきっちり撫でつけられた髪、メタルフレームのスクエア型眼鏡、いつもへの字に曲がった口元が威圧的で相変わらず近寄りがたい風貌だが、八束グループの社員たちからの信頼は厚いらしい。
「お父さん? 仕事は?」
「藤間くんに連絡をもらって、早めに切り上げた。しかしそんなことはどうだっていい。お前は、結婚前になんてことをしてくれたんだ……!」
立ったまま、強い口調でまくし立てる父。
清十郎さんが父にどんな連絡をしたのかは知らないが、叶多くんとのことを言いたいのだとは理解した。