敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
「あなたは知らないと思うけれど、彼とは、今回のスペイン旅行が初対面じゃないの。高校生の頃から、憧れを抱いていた」
「高校生? いつどこで出会っていたんだ?」
「それは……」
叶多くんとの出会いがスペイン大使公邸でのパーティーだと明かすのは、躊躇われた。
あのパーティーは八束グループと城後都市開発の因縁が生まれてしまった場でもあり、父は今でも社長である叶多くんのお父様について悪しざまに語ることがある。
叶多くんとの交際を認めてもらうために、その因縁はいつか越えなければならないハードル。けれど、このタイミングで清十郎さんに知られるのは明らかに分が悪い。
黙りこくる私をジッと見つめていた清十郎さんは、しばらくしてハッと乾いた笑いを漏らした。
「その場しのぎの嘘など俺には通用しない。嘘をつくのならもっと周到にストーリーを練り上げてからにしろ」
「嘘なんかじゃありません……!」
「だとしても、俺との結婚の方が先に決まっていたことだろう。お前のパソコンの中身をひと通り見ていて思ったが、翻訳の仕事も大して金にならない案件ばかり。子どもっぽい夢を追うのはさっさとあきらめて紫陽花楼で俺のために働け」