敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
振りほどこうとすると、掴まれた手首がますます強く拘束され、痛みが走る。
なんて乱暴な男なの……。怒りと恐怖に思わず顔をゆがめたその時だった。
「Vamos,por qué no quita sus manos deella.(彼女から手を離せ)」
すぐそばで、懐かしさを感じる低い声が響いた。反射的に顔を上げると、長身のアジア人男性が鋭い眼光でスペイン人男性を睨みつけている。
軽く横に流した前髪から覗く直線的な眉、二重の美しい目、高い鼻梁に肉感的な厚めの唇。
アジア人……というか、彼は私と同じ日本人だ。八年前に一度会っただけなのに、すぐに彼だとわかった自分に少し驚く。
大手不動産デベロッパー『城後都市開発』の御曹司、城後叶多。
まさか、こんなところで彼と再会するなんて。
驚いて目を瞬かせているうちに、叶多くんはあっさり男の手を捻り上げた。
「失せろ」
叶多くんが乱暴なスペイン語で言い放つと、男は忌々しそうに舌打ちをして彼の手を振りほどき、この場を離れていった。
ようやく肩の力が抜けた私は、こちらを振り返った彼に微笑みかける。
「ありがとう。それと、久しぶり」
「久しぶり……?」