敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

 扉の音が締まる音がすると同時に、その場にペタンと座り込む。

「どうしよう。どうしたら……」

 彼の発言は最低なものばかりだったが、中には事実もあった。叶多くんが遠い国、スペインにいること。彼が任期を終え帰ってくるのは二カ月後だということ――。

 今そばにいてくれたら、どんなに心強いだろう。

 だけど、ずっと夢だった外交官の仕事に就いている彼の邪魔をしてまで、助けを求めたくはない。彼が帰ってくるまでは、私ひとりで……なんとかこの状況を変える努力をしなければ。

 きゅっと唇をかみしめたその時、ドアがノックされた。

「美来様、カモミールティーはいかがですか?」

 泉美さんの声だ。ふっと緊張が抜けて、立ち上がる。

「いただくわ。入って」
「失礼いたします」

 静かにドアが開き、薄い黄色のカモミールティーに、カモミールの白い花を浮かべたガラス製のティーポットと、お揃いのカップをのせたサービストレイを手にした泉美さんが入ってくる。

 彼女は部屋の中央に位置する猫足のローテーブルにトレイを置くと、毛足の長いラグに膝をついて、カップにお茶を注いでくれる。

 正面に座って頬づえをついた私は、たちのぼる湯気のフルーティーな甘い香りに心を和ませた。

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