敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

「ありがとう。私が下で紅茶を残していたことに気づいてくれたのね」
「はい。それに、旅行疲れもおありでしょう?」
「旅行……それ自体はとっても楽しかったの。疲れたのは、この家に帰ってきてから」

 彼女も見ていたであろう父との言い合いを思い出し、私は苦笑した。泉美さんには普段から本音で接しているので、虚勢を張る必要もない。

「お話、少し聞こえてしまったのですが……美来様にはスペインに想い人がいらっしゃるんですか?」

 泉美さんが尋ねながらカップをこちらに差し出す。受け取ったカモミールティーをひと口飲み、優しい味にホッと息をついてから答えた。

「ええ。マドリードで偶然再会したの。とっても素敵な人。外交官なの」
「優秀でいらっしゃるんですね」
「そう。それに優しくて情熱的で……王子様みたいな人よ」

 叶多くんの色々な表情や仕草を思い出しただけで甘い気持ちになり、説明する声にもつい熱がこもった。

 ふと我に返ると、泉美さんが微笑ましそうに私を見ていたので、のろけてしまったようで恥ずかしくなる。

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