敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
「どうしたの、立ちなさい」
「なにをしているんだ美来、早く」
両親にせかされてもなお、どうしても立ち上がることができずにギュッと目を閉じる。と、その時、襖の外がにわかに騒がしくなった。
「――お、お客様? 困ります、こちらは今」
「一番困っているのは中にいる新婦です。通してください」
聞き覚えのある、声。ううん、聞き覚えがあるどころかこの声はまさか――。
「そう言われましても、今、大切なご結納の儀の最中で」
「だからぶち壊しに来たんですよ」
「は、はい……?」
背後で、勢いよく襖が開く音がした。
とっさに振り向いた先に立っていた人物と目が合い、私は言葉を失った。
スーツ姿が誰より映える長身、息を呑むほどの美麗な顔立ち。スペインにいるはずの愛しい相手が、その瞳に私を映していたから。
「叶多……くん?」
信じられない思いで、ぽつりと呟く。
今日の結納のことは叶多くんに伝えていない。
今日を迎えるまでの間、彼と何度か電話で話す機会はあったけれど、伝えたところで彼は日本には来られないし、心配をかけてしまうだけになる。
あと少しの任期をまっとうしてほしくて、結局言い出せずにいたのだ。