貴女は悪役令嬢ですよね? ─彼女が微笑んだら─
「誰が僕を傷付けた、って?」

「クロエよ。貴方は侯爵家に引き取られてから、あの女からの虐待に耐え続けていたのよね?」

「何かわかったようなこと言っているけど、全然わかってないね。
 僕は義姉上から虐待なんて受けていないけど」

「隠さなくてもいい、それは恥なんかじゃないんだよ。
 あたしに全部話してみて?
 そしたらジュールは救われるから」


僕の話なんか聞いていなくて、一方的な話しぶりのこの女がおかしくて、僕はうきうきしていた。


「へぇ、救ってくれるの?
 どうやって?」

話に乗ってきた僕に、女は嬉しそうに答えた。


「だから話してみてよ、慰めてあげる……」

「あのさ、男に慰めてあげる、なんて言うのはさ……」

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