貴女は悪役令嬢ですよね? ─彼女が微笑んだら─
中庭のベンチから僕はゆらりと立ち上がった。


「場所を変えてやるからさ、足開く前にちゃんと洗ってこいよ」

微笑んでいた女の顔から表情がなくなった。


「足? 開く?」

「女の方から慰めてあげるなんて言うのは、そういうことだろ?
 たださ、あんた臭うから、その前に洗ってきてよ。
 こっちは目を瞑って、鼻をつまんで突っ込むけど」

「……」

「あんたに触りたくないしね、痛い目に合いたくなければ、洗うついでに自分で解してこいよ」


言ってる意味がわかったのか、女は屈辱で顔を赤く染めていた。


「こっちが優しくしてやったら!
 お前みたいな半端なツンデレ、あたしは1回だって選んじゃいなかったのに!
 お前を攻略した後には、シャルルって隠しキャラがいるから、ただそれだけの存在の癖に!」


半端なツンデレ?何だかよくわからないし。
~の癖に、って言う罵りは何度も子爵夫人から聞かされたからな。
ぶつけられても、僕には全然響かないや。

バカ女が僕に背を向けて去って行く。
何も病気は持ってないのか、とか。
おかしいのは頭だけか、とか。
まだまだ言いたいことや、やりたいことはあったのにな。
これで終わりか。
呆気ないな、つまんないな。

何を突っ込んでやろうかと、連れ込んだ実験準備室の備品を頭に思い浮かべていたのに……
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