貴女は悪役令嬢ですよね? ─彼女が微笑んだら─
私がヒロインの腕を掴んでいたアンドレに近付くと、彼は下を向いたままで彼女を放した。


「怪我はない?」

いつもの丁寧な言葉遣いを止めて、普通な感じで話しかけると。
ヒロインは私に抱きついて、大きな瞳から綺麗な涙をぽろぽろ流しだした。


「だ、だずげ、で……」

全部濁音になってるよ、可愛いな。
そりゃあね、男6人に囲まれて全方向から責められたら、ビビるよね。
いいよ、助けてあげる。
一見、ヒロインにも見えるルックスだから、泣いててもそそられるね。
綺麗な女の子は好きよ、百合ルートもいいかも。

震えているヒロインの肩を抱きながら、この場で一番地位の高いリシャールにきつめに言う。


「ビグローさんの事はお世話役の私に任せていただきたいのです。
 殿下達のお手を煩わせないと、約束致しますから」


リシャールは何か言いたげだったけれど、私の目を見て。
ノワールに頭を下げて、黙ってそのまま音楽室を出ていった。
その後にシャルル、ドミニク、アンドレ、ジュール、アドリアンが続く。
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