悪役令嬢に転生した元絵師は、異世界でもマイペースを崩さない
それから一ヶ月。

王太子であるヒロムを中心に、5人は秘密裏に何度も会合を重ねた。

場所はキヨノが隠れ家にしていたあの温室。

温室までの道のりは、認識阻害の魔法がかけられ、5人以外の誰かがそこに近づけないようにした。

元々、温室を管理していた園芸部の最後の上級生が卒業したため、今は野放しにされていた温室だ。

存在すら知られていなかったため、認識阻害の魔法がかけられていたとしても怪しまれることはないだろう。

「いよいよ明日が運命の舞踏会ね。私は王太子の婚約者第一候補として、キヨノは公爵令息チヒロの婚約者として断罪されるはず」

前世の記憶を確認し、チヒロとキヨノが愛を交わし合った翌日。

二人は早々に婚約を結んだ。

辺境伯令嬢と公爵令息が婚約を結んだ場合も、魔王ルートではキヨノが悪役令嬢として登場する。

絶対回避と決めていたシナリオ通りの展開となったが、今のキヨノに少しの後悔もない。

この一ヶ月、アシゲール(滋子)とキヨノは、王太子と公爵令息が熱を上げているヒロインナナミンに嫉妬をして、手ひどい仕打ちをしてきたと、ナナミンの取り巻きに囲まれ叱責されてる毎日を送っていた。

それは貴族だけでなく、平民の生徒からも同様にだ。

これではどちらが悪役だか区別がつかない状況であるが、そこに突っ込む冷静な国民はどこにもいない。

悪役令嬢を止めることのできない不甲斐ない王太子や公爵令息、何故か単なる護衛のリオンまでもが攻撃の対象になっている。

ゲームの強制力、というより、魅了と洗脳の黒魔術恐るべし。

男性3人が悪役令嬢を庇うほど、ヒロインサイドの取り巻きの攻撃はエスカレートしていった。

物をぶつけてくるもの、暴言を吐くもの。

前世では、どんな嫌がらせを受けても証拠さえ揃えば、何とか知力と権力、財力を使って対応できた。

しかし現世では、魔術、特に黒魔術という呪いに翻弄されてしまっている現状だ。

対応しようにも、全国レベルでの洗脳や魅了に対抗することは難しい。

ここで必要になってくるのは、前世の常識を覆す、柔軟な発想力だ。

魔王やヒロインと銘打ってても、所詮中身はただの二次元素人。

こっちは百戦錬磨の二次元オタク集団だ。

ファンタジー系にはめっぽう強い。

敵と言っても、それは赤子の手をひねるようなもの。

5人は、背水の陣と思われる戦況ながらも余裕の表情で明日の舞踏会での戦闘準備を進めるのだった。

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