悪役令嬢に転生した元絵師は、異世界でもマイペースを崩さない
「前世でもろくでもない父親だとは思ってたけど、現世に生まれ変わっても大して変わらないのね。まあ、殺したいほど恨まれてるとは思いもしなかったけど」
苦笑する滋子に、チヒロも小さく頷いて同意を示す。
この二人は、前世では母親違いの異母兄妹であり、映二社長の血を分けた子供であった。
滋子は後妻の子で、千紘は愛人の子だ。
映二社長に会社を乗っ取られそうになったのを未然に防いだ二人だが、結果として、映ニと勘違い令嬢東原志津香に恨みを買うことになった。
没落し法的に罪を償うことになった彼らと、前世ではそれ以降会うことはなかったとキヨノは記憶している。
よりにもよって、滋子の開発したゲームに全員で異世界転生し、再び果たし合いのバトルを展開することになるとは、誰も想像していなかったに違いない。
「前回と違って、今回は人類と世界の滅亡がかかってるのよ。異世界転生チートについては、あいつらよりもゲームやファンタジーに詳しい私達の方が上。勝機はある。でもね、あいつら卒業式の断罪までなんて待たないと思うわよ。ほら、短気で浅はかだから。仕掛けてくるとすればおそらく、来月の舞踏会になるでしょうね」
その舞踏会には隣国の王太子夫妻が招待されており、表ルートなら七色の光魔法を披露したヒロインが彼らに気に入られ後ろ盾となるイベントだ。
しかし、裏ルートでは、この舞踏会でのみ、魔王の虹の呪いを完成させる断罪イベントが起こせる。
但し、それには、この国の国民が誰も持つことのない白の魔法の存在が必要だった。
だからこそ隣国の王太子が呼ばれた。
彼だけが持つ白魔法(味方の回復や治癒、強化)。
その力は、虹を消さないために使用尽くされようとしていた魔王の魔力復活に、どうしても必要だから。
シナリオライターの滋子しか知らないはずの未発表の裏設定を、どうやって魔王である映二が知り得たのかは分からない。
しかし、どこかで裏設定を見る機会があったのなら、間違いなく、来月の舞踏会を利用するはずだと滋子は確信していた。
作者本人が言うのだからそこは間違いないのだろう。
キヨノは、親友であり上司でもあった滋子を全面的に信用することにした。
「ところで、盗聴防止の結界はわかるけど、どうしてこうして固まって話していても誰にも咎められないのかな?」
「それは、リオンが認識阻害の魔法を重ねがけしているからだ。こいつは脳筋に見せかけて、昔から隠密活動が得意だからな」
ヒロムの言う昔とは、もちろん前世のことだろう。
いつもノホホンとしているように見えていた現世のリオンが、かつての隠密執事春日の鋭い眼光に変わった。
それでこそ、清乃が密かに憧れていた前世の人斬り春日である。
「お帰り。春日さん」
と、キヨノは懐かしさから魔性の微笑みを浮かべた。
「キヨノ、その顔はダメだ」
「えっ?そんなに変な顔だった」
キヨノは自分の両頬をそっと押さえると、ペチペチと数回叩いて確認した。
「違う。キヨノの今の微笑みは“魔性”なんだ。ヒロインと違って、自然に周りの男たちを虜にしてしまう」
イケメンメガネのチヒロに引き寄せられたキヨノは、現世ではまだ慣れないその近さに戸惑いを覚えた。
「こら、チヒロ。現世のキヨノはまだお前の恋人ではないんだ。しっかりと気持ちを確認してから口説くなりなんなりするんだな」
一切ダンスをせずに、合同授業は終了のチャイムで終わりを迎えた。
いつもならこの後、素早く騎士学科の近くの女子トイレに駆け込むのだが、これからはその必要もなくなるだろう。
「この後、キヨノはリオンと行動を共にしろ。放課後はチヒロを騎士学科に迎えにやる。今後は安全のために寮ではなく、チヒロの実家のタウンハウスに身を寄せるんだ。王太子の権限でエバンス家と学園、ホークス家には許可を取ってある」
ヒロインが、堂々と断罪宣言をしてきたことで、いつ魔王とナナミンが5人に攻撃を仕掛けてきてもおかしくはない状況だという。
5人以外のほぼ全国民が魅了と洗脳に侵されているのだ。
最高の断罪シチュエーションが整えば、直ちに魔王とヒロインは断罪を実行するに違いない。
「それにしても、こんな状況なのに、騎士学科のクラスメイトが、これまで私やリオン様に敵意を見せなかったのは何故なのかな?」
騎士学科の同級生は、入学当初より、キヨノの魔性の微笑みにさらされ続けて来たために、ナナミンの魅了の効果が効かず、闇落ちしていないらしい。
リオンに対しでは、ただ単にその存在が怖くて直視できないだけ。
キヨノのなんちゃって魔性の微笑みと、リオンの鋭い眼光に負けるなんて、ヒロインの魅了も大したことはないな、とキヨノが思ったところで、その場はお開きとなった。
苦笑する滋子に、チヒロも小さく頷いて同意を示す。
この二人は、前世では母親違いの異母兄妹であり、映二社長の血を分けた子供であった。
滋子は後妻の子で、千紘は愛人の子だ。
映二社長に会社を乗っ取られそうになったのを未然に防いだ二人だが、結果として、映ニと勘違い令嬢東原志津香に恨みを買うことになった。
没落し法的に罪を償うことになった彼らと、前世ではそれ以降会うことはなかったとキヨノは記憶している。
よりにもよって、滋子の開発したゲームに全員で異世界転生し、再び果たし合いのバトルを展開することになるとは、誰も想像していなかったに違いない。
「前回と違って、今回は人類と世界の滅亡がかかってるのよ。異世界転生チートについては、あいつらよりもゲームやファンタジーに詳しい私達の方が上。勝機はある。でもね、あいつら卒業式の断罪までなんて待たないと思うわよ。ほら、短気で浅はかだから。仕掛けてくるとすればおそらく、来月の舞踏会になるでしょうね」
その舞踏会には隣国の王太子夫妻が招待されており、表ルートなら七色の光魔法を披露したヒロインが彼らに気に入られ後ろ盾となるイベントだ。
しかし、裏ルートでは、この舞踏会でのみ、魔王の虹の呪いを完成させる断罪イベントが起こせる。
但し、それには、この国の国民が誰も持つことのない白の魔法の存在が必要だった。
だからこそ隣国の王太子が呼ばれた。
彼だけが持つ白魔法(味方の回復や治癒、強化)。
その力は、虹を消さないために使用尽くされようとしていた魔王の魔力復活に、どうしても必要だから。
シナリオライターの滋子しか知らないはずの未発表の裏設定を、どうやって魔王である映二が知り得たのかは分からない。
しかし、どこかで裏設定を見る機会があったのなら、間違いなく、来月の舞踏会を利用するはずだと滋子は確信していた。
作者本人が言うのだからそこは間違いないのだろう。
キヨノは、親友であり上司でもあった滋子を全面的に信用することにした。
「ところで、盗聴防止の結界はわかるけど、どうしてこうして固まって話していても誰にも咎められないのかな?」
「それは、リオンが認識阻害の魔法を重ねがけしているからだ。こいつは脳筋に見せかけて、昔から隠密活動が得意だからな」
ヒロムの言う昔とは、もちろん前世のことだろう。
いつもノホホンとしているように見えていた現世のリオンが、かつての隠密執事春日の鋭い眼光に変わった。
それでこそ、清乃が密かに憧れていた前世の人斬り春日である。
「お帰り。春日さん」
と、キヨノは懐かしさから魔性の微笑みを浮かべた。
「キヨノ、その顔はダメだ」
「えっ?そんなに変な顔だった」
キヨノは自分の両頬をそっと押さえると、ペチペチと数回叩いて確認した。
「違う。キヨノの今の微笑みは“魔性”なんだ。ヒロインと違って、自然に周りの男たちを虜にしてしまう」
イケメンメガネのチヒロに引き寄せられたキヨノは、現世ではまだ慣れないその近さに戸惑いを覚えた。
「こら、チヒロ。現世のキヨノはまだお前の恋人ではないんだ。しっかりと気持ちを確認してから口説くなりなんなりするんだな」
一切ダンスをせずに、合同授業は終了のチャイムで終わりを迎えた。
いつもならこの後、素早く騎士学科の近くの女子トイレに駆け込むのだが、これからはその必要もなくなるだろう。
「この後、キヨノはリオンと行動を共にしろ。放課後はチヒロを騎士学科に迎えにやる。今後は安全のために寮ではなく、チヒロの実家のタウンハウスに身を寄せるんだ。王太子の権限でエバンス家と学園、ホークス家には許可を取ってある」
ヒロインが、堂々と断罪宣言をしてきたことで、いつ魔王とナナミンが5人に攻撃を仕掛けてきてもおかしくはない状況だという。
5人以外のほぼ全国民が魅了と洗脳に侵されているのだ。
最高の断罪シチュエーションが整えば、直ちに魔王とヒロインは断罪を実行するに違いない。
「それにしても、こんな状況なのに、騎士学科のクラスメイトが、これまで私やリオン様に敵意を見せなかったのは何故なのかな?」
騎士学科の同級生は、入学当初より、キヨノの魔性の微笑みにさらされ続けて来たために、ナナミンの魅了の効果が効かず、闇落ちしていないらしい。
リオンに対しでは、ただ単にその存在が怖くて直視できないだけ。
キヨノのなんちゃって魔性の微笑みと、リオンの鋭い眼光に負けるなんて、ヒロインの魅了も大したことはないな、とキヨノが思ったところで、その場はお開きとなった。