花に償い
目的

そうして涙の別れをしたはずだった。

「薫子さま! このじゃがいも美味しいです!」
「お兄さん、良い食べっぷりですね」

桃香がにこにこと肇の相手をしている。

わたしが裏から少し顔を覗かせたのを見逃さず、肇はこちらを見てくる。
察知能力は本当に優れている。

「何をしてるの……」
「薫子の仕事を待ってるみたいよ、お兄さん」
「待たなくて良いんだけど」
「俺、待ってます!」
「待ってるみたいよ?」

溜息が出る。そして本当に仕事終わりに裏口で待っていた。

「お疲れ様です」

それに返す言葉もない。

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