花に償い

「……ここに来ていること、彼女は知ってるの?」
「彼女とは」

肇が持っていたショールを広げ、わたしの肩に掛けようとしてくる。

「わたしが陥れようとしたあの子よ」

その手を払う。空はどんより曇っており、雪が降りそうだった。

夜は昼間と違って寒い。
払った肇の手は冷たく、いつからここで待っていたのだろうと思う。

「薫子さま、冷えますので」
「すぐ戻るから要らないわ。それより、」
百合音(ゆりね)さまには言ってません。俺の勝手な行動でここに来ています」

ふわりと肩にショールが掛かった。

< 19 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop