Rhapsody in Love 〜二人の休日〜



まるで遼太郎ではないみたいだった。

押し付けられて、その行為を受ける——。
かつて石原から、無理矢理に行為に及ばれた時の記憶がオーバーラップする。


みのりは息を殺しきつく目をつぶって、体に残る過去の恐怖と悲しみを、意識から締め出そうとした。だけど、その間も遼太郎の手首を掴む力はもっと強くなる。


「……遼ちゃん、手が。……痛い」


耐えられなくなったみのりが、微かな声で訴えると、遼太郎もそれには反応し、手の力を緩めてくれた。
しかし、遼太郎はみのりの手首を掴んだまま、そこに唇を這わせる。みのりの掌から指の一本一本まで口づけされ、再び手首に戻って来た唇はそこにも遼太郎の印をつけた。


それからもうみのりは、遼太郎が何をしようと、ただその行為を受け入れた。
遼太郎の愛撫は乱暴というよりも、逼迫して切実で、救いを求めるようだった。繋がっている間も、満たされない心を満たすように、みのりをきつく抱きしめ深いキスを繰り返した。


抱きしめ合ったまま達して、みのりに被さり息を荒げる遼太郎の頭を、みのりがそっと撫でる。そして優しく両手で持ち上げて、薄暗い空気の中に浮かぶ遼太郎の顔を見つめなおした。



「……遼ちゃん?……どうしたの?」


みのりが問いかけても、遼太郎は答えなかった。ただ、みのりを見つめる目がいっそう切なくなる。


< 119 / 311 >

この作品をシェア

pagetop