Rhapsody in Love 〜二人の休日〜




みのりの心臓がドキンと跳ね上がった。返す言葉も見つけられず、どんな顔をして応えたらいいのか分からなくなる。
とっさに視線を傷の方へと戻して、動揺をごまかすように、自分のやるべきことに専念した。


両肘をはじめ、両方の膝や首や肩。
遼太郎の体には、いろんなところに傷ができていた。ジャージで隠された場所にも傷があり、どうしてこんなところに怪我をするんだろう?…と、みのりは疑問に思いながら、それら一つ一つの傷に軟骨を塗って絆創膏を貼り、丹念に手当てをしていった。


「高校生の時も、試合の時にはこんなに怪我してたっけ?」


みのりはそう言いながら、週末に試合をした遼太郎が、顎に傷を作っていたことを思い出していた。

遼太郎も思い返すように、首を捻る。


「うーん…。高校時代の試合は、今日よりももっと必死だったから傷も出来てたでしょうね。…あんまり、覚えてないですけど」


「試合だけじゃなくて、練習の時は?怪我しないように気をつけてるの?」


「そりゃ、不必要に怪我はしたくないですから、ぶつかる練習のときはコンタクトバッグやタックルバッグを使ったり、コンタクトビブスを着たりはしますけど」


「……遼ちゃん、練習で怪我してたよね?左手の甲の皮が、痛々しいくらい擦り剥けてた」


「………?」


遼太郎の思考を映すように、会話が途切れた。




< 246 / 311 >

この作品をシェア

pagetop