Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
別れていた頃の話題に触れる時、いつもみのりが自嘲ではなく泣き出しそうになることを、遼太郎は知っていた。何か他の話題にすり替えないと、みのりは本当に泣いてしまうかもしれない。
「先生はこの傷に限らず、負傷した時の手当てに慣れてますね。どこかで習ったんですか?」
すかさず遼太郎がその問いを投げかけて、みのりの思考が後悔と哀しみの淵に落ちていくのを防いだ。
「…ん?私が、慣れてる?」
意外そうに、みのりが遼太郎の目を見上げる。
「はい。俺が騎馬戦で怪我した時とか、試合で鼻血出した時とかも手当てしてくれたから……」
遼太郎が指摘した出来事は、みのりの中では特別に大切な思い出でもあった。
遼太郎への想いを自覚しないように必死だった時のことだ。恋人として触れ合うのではない、教師と生徒という立場の中で触れ合えた、貴重な出来事だった。
「騎馬戦の時は保健室の先生の言う通りにしただけだったし、鼻血は前に対応の仕方を調べたことがあったの。……だけど」
と、そこでみのりは躊躇するように言葉を切った。その先を促すように、遼太郎はじっとみのりを見つめる。
「だけど、実はね。………」
と言いかけて、また言葉を途切れさせる。
「………??」
ますます遼太郎に見つめられ、みのりは頬を紅潮させてたじろいだ。