Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
「……いや、やっぱりいいや」
恥ずかしくなったみのりは、思い直して会話を中断し、再び手を動かし始める。
「ええ?!言いかけて止めるなんて!気になるから教えてください」
気を持たされた遼太郎は、作業に没頭するふりをしているみのりに、そう訴えた。
さらにじっと見据えられて、遼太郎はその視線を動かしてくれない。みのりは観念して再び口を開いた。
「遼ちゃんの鼻血の手当てをした後、いろいろ調べて勉強したのよ」
「いろいろ…って?」
「ラグビーしてると、いろいろ怪我しちゃうでしょう?もちろん怪我を恐れずにプレーしてるところが、かっこいいところでもあるんだけど。もし、鼻血じゃない他の怪我だった時にはどうしたらいいんだろう…って。もし〝狩野くん〟が怪我した時には、また助けてあげたいな…って、いろんなことを勝手に想像してね……」
そう言って説明するみのりの顔が、湯気が出そうなくらいに真っ赤になった。
要するにみのりは、まだ〝狩野くん〟だった遼太郎がまた怪我をした時には役に立ちたいと、誰でもなく自分が手当てをしたいと、いろいろと思いを巡らしていたらしい。
それは、みのりのいじらしい恋心の表れでもあった。
「だから、今もこんなに手際がいいんですね?」
遼太郎が優しく微笑む。そう言われると、みのりはますます恥ずかしく感じて、手当てをする手もわなわなして力が入らなくなる。