Rhapsody in Love 〜二人の休日〜

感謝と激励と…





——……こ、これ。いったいどうやって渡せばいいんだ?!


OB会も終わり、試合に使用した道具類の片付けも終わりに近づくと、俊次はソワソワして落ち着かなくなった。


みのりから預かったお守り。これを愛に渡さなければならない。
みのりは『必ず今日』渡すように言っていた。今日渡すのであれば、ぐずぐずしていると愛は帰ってしまう。


渡すだけなら簡単だ。愛の反応なんて関係なく、有無を言わさず押し付けてしまえばいい。

だけど、みのりは〝感謝と激励〟をするためだと言った。人として当然のことだと、誠意のある人になれるためだとも言った。


——だから!なんて言って渡せば、いいんだよ!!


俊次は肝心のその言葉を、みのりから教示してもらわなかったことを後悔していた。


俊次がそうやって逡巡している間にも片付けが大方終わり、部員はちらほらと帰り始めている。それでも、俊次にはまだ少し猶予があるはずだ。愛は細かいところまできっちりと部室の整理整頓をして、いつも部室を出ていくのは最後だった。


そんなとき、俊次と同級生の部員が一人の三年生のもとへ向かった。


「先輩、本当にお世話になりました。受験、頑張ってください!!」


張りのあるその声には、先輩に対する感謝と激励が込められていた。
三年生の先輩もそれに応えて、手を差し出して握手をする。



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