Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
「おう!ありがとう!!お前も頑張れよ!」
二人はフッカー(※)というポジションを担う先輩と後輩。背は低いけれど首が太く同じような体型で、まるで兄弟みたいだ。お互いに切磋琢磨し、厳しい練習も一緒にこなしていた仲だった。
「俺の方こそ、ありがとうございました」
涙を滲ませる後輩の感謝と激励はしっかりと先輩に伝わっているようで、感極まった二人は握手だけではなく、お互いがっしりと抱きしめ合った。
「おおー……」
俊次はその光景を目撃して感心した。
普段のひねくれ者の俊次ならば、冷やかす言葉を投げかけてしまうところだけど、この時ばかりは俊次もその気持ちがよく分かった。
先輩も後輩も関係ない仲間の間に出来上がった一生の礎となる〝絆〟。その絆が持てたことに、心が熱くなる。
これがラグビーという厳しい競技がもたらす感動であり、まさしくこれが、みのりが求めている理想だと俊次は思った。
そして、その二人を皮切りに、高校生として一緒に闘う最後の試合を終えた先輩と後輩達は、思い思いに労い合い励まし合う。
唯我独尊タイプの俊次には、特に恩を感じたり思い入れのある先輩はいなかったから、部室の中や外で繰り広げられてる挨拶を、少し羨ましく思いながら眺めていた。
--------------------
※フッカー…スクラムを組む時に、最前列3人の中央で相手フォワードと直接組み合うポジション。スクラムをコントロールすると同時に、スクラムハーフが投げ入れたボールを足でかきだす役割を担う。また、ラインアウト時にボールを投げ入れる役(スローワー)となることが多い。