Rhapsody in Love 〜二人の休日〜




小山のあの言葉の後では、どんな励ましも色褪せてしまって、意味のないもののように愛には感じられた。


愛は顔を小山が出て行った部室のドアに向けたまま、唇をキュッと噛んだ。

寂しさと切なさと歯痒さと、色んな感情が心の中に充満して、なにか言葉を発したら涙も一緒に出てきそうだった。
今、泣いてしまうと、自分でも整理できていない感情が、めちゃくちゃな形で飛び出てきてしまう。もし『好きだ』と言ってしまって、俊次にそれを否定されてしまうと考えただけで、怖くてたまらなくなる。


もうこれ以上は、俊次と同じ場所にはいられない。愛は一刻も早く、この場所から逃げ出したくなった。


「それじゃ……ね。戸締りして帰ってね」


俊次の方に振り返ることも出来ずに、愛はバッグを肩にかけるとドアに向かって足を動かし始めた。
その足の動きが次第に速くなり、走り出そうとした時、


「……おい!ちょっと待てよ!」


部室の中に俊次の声が響いた。

反射的に愛は立ち止まって……、だけどやっぱり振り返ることは出来ずに、その場に立ちすくんだ。
ドキンドキン…と胸の鼓動が大きく速くなって、緊張のあまり体が震えてくる。


背後でゴソゴソと俊次の動く気配がして、


「……これ」


と、言葉がかけられても愛は振り返らなかったので、俊次は大股で近づいて〝それ〟を愛に差し出した。



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