Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
「これ、みのりちゃんから」
目の前に差し出されたので、成り行き上、愛は『御守り』と朱書きされた封筒を受け取った。
——みのりちゃん……。これを私に渡すように、気を利かせて俊次に頼んでくれてたんだね。
察しのいい愛は、この俊次の行動は俊次自身の意思ではなく、みのりに促されたからだと分かっていた。
だからこそ、いっそう切なくなって、やり切れなくなる。
俊次が自分からこの行動をしてくれたのなら、愛はこの高校生活の全てを忘れてしまうほど、嬉しく思ったことだろう。——だけど……。
愛は、手の中にあるお守りの入った封筒をジッと見つめた。少しヨレヨレになっているのは、きっと俊次が迷った証拠。声をかけるタイミングを見計らって、何度も出したり入れたりしたからに違いない。
そして、結局こうやって、これを渡してくれている。
渡してすぐにどこかへ行ってしまうのではなく、俊次は愛の反応を確かめるように、側でジッと見つめてくれている。
「……ありがとう」
愛は胸がいっぱいで、やっとのことでその言葉を発した。
少し涙が混ざった響きを聞いて、俊次もいつものように憎まれ口が利けなくなる。
「いやこれは、俺からじゃなくて、みのりちゃんからだから。みのりちゃんの実家ってお寺で、これはそこのお守りなんだって」
俊次が普通に話してくれたので、愛も幾分落ち着いて普段通りを取り戻す。