Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
「みのりちゃん。直接渡してくれたらよかったのに……」
愛はそう言ってほのかに笑ったけれど、これが俊次の手になかったら、みのりが直接渡してくれていたら、きっと俊次とはあのまま言葉を交わすことなく、部室を出て行ってしまっていただろう。
みのりがこれを俊次に託したのは、愛のためであることはもちろんのことだけど、〝俊次のため〟でもあると言った。
俊次は、みのりが作ってくれた〝誠意のある人〟になれるための貴重な機会を、なんとか生かしたいと思った。もうこうやって、愛とは日常的に部活で会うこともなくなるのに、自分のことを〝会うたびに喧嘩をしていた相手〟と記憶されることだけは避けたかった。
だからこそ、気負ってしまって、俊次の口からは言葉が出て来てくれない。すると、愛の方が言葉を続けた。
「みのりちゃんだけじゃなく、俊次もありがとうね。ラグビー部に入ってくれて、ホントにありがとう……」
まさかこんなふうに、愛から感謝されるとは思っていなかったので、俊次の胸になおさらその言葉が沁みてしまう。
——俺の方こそ、ありがとう……。
ここできちんと言葉に出して言わなければ、〝誠意〟は表せない。だけど、俊次は本当に寂しくなって、泣いてしまいそうな感覚になった。
俊次からは何も言葉が返ってこなかったけれど、愛は「良かった」と思った。
——ちゃんと俊次に言いたかったことが言えて、本当に良かった……。