Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
欲を言えば、みのりと約束したように〝告白〟をして、想いを打ち明けるべきなのかもしれない。こんな機会はもう二度と巡って来ないかもしれない。
だけど愛は、これが今の自分の精一杯だと思った。
「……それじゃ、三年生になっても頑張って。花園に行けるといいね」
愛は最後にそう言って、握手をするために右手を出そうと思った。だけど、やっぱり怖気付いて、その右手は愛のバッグを肩に担ぎ直されるために使われた。
潤んでくる瞳で微笑みながら、愛は部室から出て行こうとする。その様子を見て、俊次は焦った。
——まだ行っちゃダメだ!!まだ俺は肝心なことができてない……!!
俊次がそう思った時、まるでラグビーボールを追い求める時の感覚と同化した。何も考えることなく、体が勝手に動いていた。
「………?!」
愛が息を呑んで固まった時、愛の体は俊次の腕の中にすっぽり包み込まれていた。
——えっ?……えっ?!何が起こってるの?!
寂しさや切なさや怖さ……、今まで愛を押し潰そうとしていた色んな感情は、この瞬間に吹き飛ばされて、愛は頭の中が真っ白になってしまった。
肩にかけたバッグの持ち手を固く握りしめたまま、俊次の腕の中で身動きが取れなくなっている。
俊次の腕にギュッと力がこもり、その中の空間が狭くなる。自分の顔が俊次の胸に押し付けられて、愛は自分が俊次に抱きしめられていることに気がついた。