Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
俊次の腕の中にすっぽりと収まってしまう華奢な体。その細さと柔らかさ——。
それは俊次が思っていた感覚と全然違っていた。いつも屈強な男にばかり抱きついていた(タックルしていた)俊次にとって、あの感覚は衝撃以外の何ものでもなかった。
体がムズムズしているのか。胸がザワザワしているのか、モヤモヤしているのか……。とにかく、なんだか気持ちが定まらない。こんな感じは、単純思考の俊次には受け入れがたいものだった。
深呼吸しても、体の奥の方の細かな震えが消えてくれない。
「いや、俺は!兄ちゃんが言ってた通りやっただけだし!!」
誰に話すでもなく、俊次はズンズン歩きながら、独りで叫んでいた。
実は数日前、俊次は遼太郎からこんな話を聞いていた。
「俊次、知ってるか?芳野高校のラグビー部には、卒業に関わる伝統があるんだぞ」
「え?聞いたことない。なに?」
「知らないのか?お前が知らないんなら、もうそんな伝統っていうかジンクスは、消滅してしまったのかもな」
こんなふうに遼太郎にじらされて、俊次は無性にその〝伝統〟とやらを知りたくなった。
「だから、なんだよ?その、〝伝統〟って?」
「大学入試の前に、いちばんお世話になった先輩を、心を込めて抱きしめて応援するんだ。すると、それをしてもらえた先輩は落ちないらしいんだ」