Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
「……って、俺!!自転車で行ってたのに、乗って帰るの忘れてるじゃんか!!」
来た道を振り返ってみても、もうすでに学校へ戻るよりも家に帰る方が近かった。
「はあ?!こんなみのりちゃんみたいな展開って、あり?!」
と、自分のドジに歯ぎしりしても、それはそれだけ、俊次が愛を抱きしめたことに動転していた証拠でもあった。
「ああ、もう!!くっそー!!」
俊次はそう言って叫ぶと、家に向かって走り始めた。こうやって走って〝トレーニング〟ということにすれば、少しは気持ちが慰められた。
愛が一人きりで立ちすくんでいた部室にも、傾いた日の光が西向きの窓から柔らかく差し込んできた。
部室全体が暖かな空気に満たされ、そこにあるロッカーやボールを入れたバスケット、練習道具たちが、とても優しい光で包まれている。
愛の目に映る全てが、とても愛おしかった。過ぎゆく一秒一秒が、とてもかけがえがないように感じられた。
愛のここでの時間は、もう終わりを告げた。
もうここを立ち去らなければならない。
一筋の涙がスッと、愛の頬を伝った。
けれども、愛は唇を噛んで涙を手の甲でぬぐい、それ以上泣いてしまわないように涙を堪えた。
「うん。頑張るよ!最後まで、絶対にあきらめないから!!」
俊次の言葉を繰り返すように、愛は自分に言い聞かせた。