Rhapsody in Love 〜二人の休日〜

策士





みのりは居間から、ベランダで洗濯物を干す遼太郎を眺めていた。西日が射す方を仰ぎ、眩しそうに目を細める遼太郎は、まるで遼太郎自身が輝いているように見えた。
また忘れたくない絶景に出会ったと、みのりは思った。


窓を開けて室内に入ってきた遼太郎は、みのりからじっと見つめられていたことに気づいて、


「……どうかしたんですか?」


という問いとともに、優しい眼差しを向けてくれた。


——忘れたくない光景を目に焼き付けてたの。


思っていたことを正直に明かしてしまっても良かったが、


『そんなに頑張って、俺のこと憶えてなくていいですよ。俺はずっと先生の側にいるんですから……』


遼太郎がそう言っていたことを思い出して、みのりはとっさに違う話題を持ち出した。


「ああ、あのね……俊次くんのことよ」


話題に困った時の俊次は、本当にありがたい存在だった。


「俊次が、どうしたんですか?」


薄着で寒いベランダにいた遼太郎は、まるで暖を取るようにみのりの隣に来て、みのりを抱き寄せた。


「俊次くん。お守り、愛ちゃんに渡してくれたかな?あの二人、ちょっとは進展したと思う?」


この問いかけに、遼太郎はみのりを抱き寄せたまま、しばし考えた。


お守りを渡された時の俊次の様子を見るに、愛のことを意識している感じはしなかった。愛のことはおろか、俊次が誰かを好きになる感性を持ち合わせているのか、遼太郎は疑わしいと思ってしまう。


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