Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
「……そんなの、よく覚えてません」
「覚えてないって?遼ちゃんはあの時、ドキドキしなかったの?……胸まで触っ……ふがっ」
みのりが〝あの時〟のエピソードを持ち出そうとしたので、遼太郎は真っ赤になってみのりの口を再び掌で覆った。
「あの時はドキドキどころじゃなかったです。バクバクだったし、オロオロだったし……。罪悪感の方が強すぎて、今でも思い出すと冷や汗が出ます」
みのりが思っていたよりも、遼太郎はあのエピソードを深刻に記憶しているようだ。それをほじくり返して意地悪を言っていたことに、みのりは申し訳なくなった。
「……ごめん。嫌なこと思い出させちゃって……」
「いや、嫌なことでは……」
しゅん…としてしまったみのりの様子に、遼太郎の方も言葉が潰えてしまう。
みのりが顔を上げて、壁にかかる時計を確認した。つられて遼太郎も同じように時計を見上げる。
いつの間にか冬の太陽が山の向こうに隠れて、この部屋も翳りつつある。
そろそろ遼太郎は準備をして、OB会の〝二次会〟に出かけなければならない頃合いになってきた。
——でも、まだ……もう少しなら、大丈夫。
遼太郎はそう思い直すと、みのりに回す腕に力を込めて抱きしめなおす。すると、みのりもそれに気づいて、遼太郎を見上げると微笑みかけた。