Rhapsody in Love 〜二人の休日〜

今夜は寝かさない





触れるだけで終われないキスは、何度も重ねられた。どのキスも最後にはできなくて、何度も引き寄せられる。


「……今年はもう、〝二次会〟に行くのはやめようかな……」


キスの合間にポツリとこぼれ出た遼太郎の言葉に、ピクリとみのりが反応する。
背中のシャツを握っていた手の力を緩めて、遼太郎の腕の中から遼太郎を見上げた。


「ドタキャンしても大丈夫なの?」


「う——ん……」


遼太郎は抱きしめたみのりの髪を撫でながら、二次会の雰囲気を思い出す。
会は、年齢の差など関係なく和気藹々と楽しく酒が酌み交わされ、一人くらい来てなくても誰も気が付かないくらい盛り上がっている。

あの楽しい場に身を置きたい気持ちもあるが、今は何より、みのりの側を離れたくなかった。


遼太郎のそんな思考を読んでいたのだろうか。みのりは遼太郎が『……大丈夫』と言い出す前に、首を左右に振った。


「今日の試合でいちばん活躍した遼ちゃんがいなきゃ、会が始まらないんじゃない?」


「……いちばん活躍したのは俺じゃなくて、ふっくんです」


あまり気が進まない遼太郎は、ささやかな抵抗に出た。


「え?二俣くん?遼ちゃんの方がトライ数は多いじゃない」


「ふっくんのあのジャッカルが、あの試合の中のベストプレーでした。まるで現役の選手みたいにすごかったです」


「ふーん…。私の中では、遼ちゃんのチャージやハンドオフの方がすごいと思ったんだけど……」


「お。先生、何気にラグビーについて詳しくなってますね」


自分が教えていないはずのラグビーの知識だったので、遼太郎は目を丸くする。


「ふふふ…伊達に試合を観に行ってるわけじゃないのよ……って、今日江口先生から教えてもらったんだけどね」


相手がみのりに想いをかけていた江口だということに、遼太郎の眉間に皺が寄る。
でも、そんな心の狭い思考が立ち込めてきたことを自覚して、遼太郎はあえて口角を上げて応えた。


「話を戻すけど、遼ちゃん。こういった会には行くべきなのよ。OBの中にはいろんな人がいるでしょう?親しくなれば、人脈って言う財産ができるから」


みのりの〝先生〟らしいアドバイスを受けて、遼太郎はその通りだとは思ったけれど、みのりが名残を惜しんでくれないのが物足りなかった。



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