Rhapsody in Love 〜二人の休日〜




「先生は……、俺が行ってしまっても寂しくないんですか?」


この遼太郎の可愛い物言いに、みのりは思わず笑みがこぼれてしまう。


「そりゃ、寂しいよ。だけど、一年に一度の貴重な機会じゃない。私とはその後、一晩中一緒にいられるんだから」


みのりがにっこり笑うと、遼太郎も諦めたようにため息をついた。ここまで言われてしまうと、行く選択肢しかなくなる。

みのりへの抱擁を解くと、もう一度ため息をついて立ち上がる。


「どうやって行く?車で送ってあげようか?」


「先生は今日、車の運転はダメですよ。大通りまで出て、バス……いやタクシー拾います」


「もう全然、なんともないのに……」


そんなみのりの呟きを、遼太郎はコートを羽織りながら黙って聞いていた。


二次会に行くとしたら、いつものようにランニングしたり悠長にバスに乗ったりしていては、間に合いそうになかった。

大通りまで出るにも、ずいぶん距離はある。
そもそも、こんな街外れにまで来ていなかったら、もっと簡単に二次会にも行けたはずだ。

みのりはなんだか申し訳なくなってくる。けれども、今さら引き止めることもできず、スマホや財布をポケットに押し込んでいる遼太郎を、じっと見つめた。

心を映してみのりの表情が曇ってくる。言っていたことと裏腹のそんな表情を見て、遼太郎はやっぱり可愛いと思ってしまう。



< 283 / 311 >

この作品をシェア

pagetop