Rhapsody in Love 〜二人の休日〜




遼太郎への気持ちに気づいたばかりの頃、同じような光景を目にしたことを思い出す。
ラグビー部の三人と焼肉を食べに行き、帰りに熱を出して、遼太郎にこのアパートまで送ってもらった。
あの時も、遠ざかっていく遼太郎の背中を見て、心が張り裂けそうなくらい恋しくて、切なかったことを覚えている。



「りょーぉちゃーん!」


みのり自身も気づいた時には、橋を渡り始めている遼太郎の名を思わず呼んでしまっていた。


みのりの声が聞こえて、遼太郎は顔を上げて、みのりのアパートの方を見遣った。

アパートの2階のベランダにみのりがいて、そこから手を振ってくれている。遼太郎も反射的に、橋の真ん中からみのりに向かって手を振った。


遼太郎の中に、不意に記憶が蘇ってくる。
大学1年の夏休み、みのりに会いたくて街中を自転車で探し回り、夜遅くにここに辿り着いた時のことだ。
街灯に照らし出されたアパートの、みのりの部屋は暗くひっそりとしていて、それを見つめた時のどうしようもなく辛く切ない感情は、まだしっかりと遼太郎の中に残っていた。


だけど、今は同じ場所にみのりがいて、こうやって名前を呼んで手を振ってくれている……。
こんな未来が待っていると、あの時の自分に教えてあげたいと思った。


——あんな薄着で外に出てると、風邪を引いてしまう……。


遼太郎はみのりにそれを告げるために、アパートへ向かって叫ぼうとした。



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