Rhapsody in Love 〜二人の休日〜




本当なら、就職について相談に乗ってあげるべきなのかもしれないが、この〝離れ離れ〟が怖くて、就職のことは口に出せなかった。


——私も東京で仕事を探す……?


そう思ったみのりは、即座に首を左右に振った。
みのりが今の教師の職を辞めて再就職することを、遼太郎は望んでいないかもしれない。それに、東京まで押しかけて行くなんて、〝結婚〟を迫っているみたいだと思った。


みのりはギュッと膝を抱え、揃えられた膝小僧に額をつけて、やるせない感情が通り過ぎてくれるのを待った。


結婚を望んでいないといえば嘘になる。遼太郎のことは死ぬまで想い続けると心に決めているのだから、出来ることなら遼太郎と結ばれて、一生一緒にいたいと思う。


——だけど……。遼ちゃんはまだ若すぎるわ……。


まだ若い遼太郎には、何も背負うものなく、何にも邪魔されず、自分のやりたいことだけに全力を注いでほしい。若くて独身という自由な立場であればこそ、経験できることもたくさんあるはずだ。

遼太郎のことは縛りたくない。
それは、遼太郎のことを大切に思えば思うほど、揺らがなくなるみのりの決意でもあった。


反面、みのりの中には行き場のないどうしようもなく切ない想いが充満する。
何も考えずに、この遼太郎への想いに全てを委ねてしまえればいいのに、みのりはどうしてもそれができなかった。


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