Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
恐ろしくゆっくり進む時間。
それでも、ジッと時計と睨めっこをしている内に、時刻は十時を回った。予想していたよりも遅くなり、みのりは落ち着かなくなってくる。
ソワソワして座っていられなくて、キッチンに立つ。しかし、そこで何もすることはなく、キョロキョロと視線を走らせ、とりあえずヤカンを手に取った。ヤカンを火にかけ、無意識に手はコーヒーを淹れる手順で動いていたが、夜遅くにコーヒーは飲まないようにしていることに気がついた。
——でも今日は、コーヒー飲んでもいいかも。遼ちゃんが『今夜は寝かさない』って言ってたし……。
そう思った瞬間、たった今お湯が沸き上がったヤカンと同じように、みのりの顔は湯気が上がらんばかりに真っ赤になった。
「いや、別にっ!!期待しているわけじゃないけど!!」
誰もいないのに、思わず焦って一生懸命に言い訳する。
そうは言っても、クリスマスの夜の遼太郎を思い出してしまうと、みのりの体の芯が切なく疼いて、次第に熱ってくる。
ありのままの自分の全てを、遼太郎に委ねて抱きしめられる。
あれ以上の幸せな瞬間はないのだから、『期待しない』なんてできるはずもなかった。
けれども、今はまだ、この胸の鼓動は鎮めなければならない。
みのりはとりあえず、紅茶の缶を手に取った。優しい味のミルクティーでも淹れて、疾ってしまう気持ちを抑えようと思った。