Rhapsody in Love 〜二人の休日〜




「……!」


ピクリと遼太郎が反応すると、みのりは遼太郎が逃げていかないように、腕にギュッと力を込める。


遼太郎はもう我慢をしなかった。溢れてくる想いのままに、みのりの唇を欲した。

みのりも遼太郎のキスに溺れながら、願いが叶えられたと思った。はじめは夢を見ているのにかと思っていたけれど、目の前にいる遼太郎は夢ではない。


逆に、夢ではないということは、甘いキスをくれるこの人は、夜明けと共に姿を消してしまうということだ。

遼太郎をずっとここに閉じ込めておくわけにはいかない。『行かないで』と思うのは我儘だと分かっている。
だけど、〝送り出す〟というより、〝置いて行かれる〟感覚になる。遼太郎が側にいないだけで、独りで生きていこうと覚悟を決めていた時よりも、独りぼっちにされるような気持ちになる。


キスの合間に遼太郎を見つめるみのりの綺麗な瞳。その瞳が潤んで揺れて、涙が零れて落ちる。

その涙の意味を、遼太郎もよく解っていた。


「先生……先のことは考えないで。今は目の前の俺のことだけを見て、俺のことだけ考えていてください」


遼太郎はみのりの目をまっすぐ捉えて、表情を和ませる。そして、みのりの瞼や頬に口づけて、涙を拭う。


それから、二人の間に言葉はいらなかった。お互いが抱える想いや感情は、何も言葉にできなかった。
今はただ、二人の間を阻むもの全てを取り去って、目の前にいる愛しい人を愛するだけだった。



< 302 / 311 >

この作品をシェア

pagetop