Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
いつだってみのりとの未来のためならば、どんな犠牲を払っても、どんなことだってやるつもりだった。
目を閉じて唇を噛んで、遼太郎は自分に言い聞かせる。
——頑張らないと……!
またみのりの側に、還って来ることができるように。
何の不安もなく、こうやってみのりを抱きしめられるように。
遼太郎は、みのりを起こさないように、するりとその隣から抜け出した。
チェストの上のランプを点けると、脱ぎ散らされた服が照らし出される。それを拾っては一枚ずつ身に着けて、そろりそろりと洗面台に向う。そこで顔を洗って居間に戻ってくると、その隅に、昼間遼太郎が着ていたジャージやウインドブレーカーなどが畳まれて置かれていた。
——先生が取り入れて、乾かしてくれたんだな……。
そんなことを思いながら、リュックの中にそれらを詰め込む。
それから、することは……。
ここを出て行くための準備はもっとゆっくりしたかったけれど、思いの外やることが少なかった。
あとはコートを羽織って、靴を履くだけ……。
遼太郎は淡々と鴨居のフックにかけられていた自分のコートを手に取り、それに腕を通した。
みのりは起こさないで出て行こうと心に決めていた。
起こして言葉を交わしてしまうと、名残りが尽きなくなる。泣かれてしまうと、それこそ〝可愛い〟と思う以前にここを離れられなくなるだろう。