Rhapsody in Love 〜二人の休日〜




こうやって甘い夜を過ごした後なら、尚更別れが辛くなる。


——先生が起きた時に俺がいないと、きっと寂しがって悲しむだろうけど……。


それでも、今眠ったばかりのみのりを敢えて起こしたくない。みのりも遼太郎が朝に出て行くことは分かっていたはずだし、面と向かって別れを惜しむよりもダメージが少しは浅いかもしれない。


——あ、そうだ。


遼太郎はあることを思いついて、キョロキョロと辺りを見回した。暗い部屋の中で、本棚の隣にある机の上をスマホのライトを点けて物色する。

そして、そこにあった古文書解読用の原稿用紙を一枚拝借して、シャープペンシルを手に取った。



『先生がよく眠ってたので、起こさずに出て行きます。

次に帰ってくるのは、教育実習がある6月になると思います。4月に先生は異動してて、芳野にはいないんですよね?
でも、先生がどこにいても必ず会いに行きます。その時は良い報告ができればいいんですけど…

先生も忙しいと思うけど、無理はしないでください。先生は俺の命よりも大事な人なので、俺のためにも自分を大事にしてください。

ついでですけど、俊次のことも、一応よろしくお願いします。』


遼太郎はスマホのランプの明かりを頼りに手紙を(したた)めて、それを居間のローテーブルの上に置いた。


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