Rhapsody in Love 〜二人の休日〜



「出会ってから、今まで一度も?」


「うん。ねえさんと出会ってからの4年間を思い返してみたけど、一度も思ったことはないよ」


古庄の断言を聞いても、遼太郎は納得ができなかった。それほど、みのりは遼太郎の周りの男の心を奪っていたし、生徒も教師も関係なく女性とはほとんど接触を持たない古庄が、唯一親しくしている女性だった。


「そりゃ、見た目や仕草が〝かわいい〟と思ったり、さっきみたいに体が密着していい匂いがしたりするとドキドキはするけど……、それだけだ」


古庄の正直すぎる胸の内を聞いて、遼太郎の眉間はピクリと反応して皺を作った。


——……いや、それって。ほとんど好きになりかけてる現象だと思うんだけど……。


そう思ったけれど、当の古庄は自覚していないらしい。自覚されて本格的に好きになられでもしたら、遼太郎にとっては不都合極まりないので、古庄の考えに同意するように聞き流した。


「もちろん人間としては尊敬してるからそういう意味では〝好き〟だけど、恐れ多くて自分のものにしたいなんて思わないよ。だけど、どうでもいい人じゃない。気づいたら違和感なくそこにいて、俺の日常になってたような、俺にとっては他の人とは違う特別な人だ」


古庄はそう言って微笑んだ。
異性として好きになったことはない。それは理解できたが、〝特別な人〟だと言うのなら、遼太郎にとってもみのりは誰とも比べられない特別な人だった。


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