「え…なんすか…まさか記憶喪失っすか?」



冗談でしょ、というような顔つきでヒロさんが問いかけた。



そして視線を、リュウくんのほうへ。



だけど肝心のリュウくんは、まだ何もしゃべらない。



事故後、最初に私と対面したときと同じだった。



私はもう一度、お義母さんに目配せをした。



お義母さんは小さく頷いて、



「リュウヘイ、お母さん、この人たちとお話があるから、ちょっと外に行くわね」



と、リュウくんの顔をのぞきこんで言った。



ちょっといいかしら、と4人に言ってドアのほうへ向かう。



彼らも、戸惑う様子を見せながらもお義母さんの後に続いた。



そして病室のドアが閉まろうとしたそのとき、私は、あ!と思った。





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