あの雨の日、橋から飛び降りようとしたのを助けてくれたのは"君"でした
もう21時を過ぎていた。
こんな時間に電話なんて……。
まあそもそも電話なんてほとんど鳴らないけど。
僕は画面を見た。
するとそこに乗っていた名前は…。
「あやの…先輩」
今…会いたくて声が聞きたくてたまらないと思っていたあやの先輩だった。
僕は心の準備もできてなくて手がすごい震えて変な汗まで流れてきた。
出ようか悩んでいると切れてしまった。
「あ……っ」
あやの先輩…。
「僕は……これからどうしたら……っ」
本当はどうしたらいいかなんて答えが出ていた。
だけどその選択肢は僕には辛かったから。
だから…逃げたかった。
違う道を探したかったんだ。
もうあやの先輩を傷つけたくない。
あやの先輩と一緒に……またどこかへ出かけたい。
だから僕は──。

「あやの先輩!」
「……優星」
──だから僕はあやの先輩のそばに行く。
もう…逃げない。
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