シロツメクサの約束~恋の予感噛みしめて~
「うん。治療が終わるまでは離れないって約束する」

 目を見て話しをすると、彼がうなずいた。その顔にはまだ〝怖い〟という感情が見て取れたが、彼は決心したようだ。

「僕、ちゃんと歯を治す」

 幼いながらの決心に、ここにいる大人たち全員がほっとした。

「あの、よろしくお願いします」

 お母さんがほっとした表情で頭を下げた。

「はい! 空くん、がんばろうね」

「うん、僕がんばるから、ちゃんとできたら先生ひとつお願いかなえてくれる?」

 泣きすぎて目を真っ赤にし、これから怖い治療に耐えようとする男の子の願いを受け止めないわけにはいかない。

「もちろん! 先生にできることならね」

「やった。僕いっぱい我慢するね」

 私の手をしっかり握って、空くんは最後の覚悟を決めたように見えた。

「では、お子様お預かりします。治療の方針は説明に来ますので。あとずっと抱っこも大変でしょうから、あちらお使いください」

 彼はキッズコーナーを案内してから、処置室へと私と空くんを促す。

「ママに〝いってきます〟しようか?」

「うん」

 私は園で親御さんと離れる際にする挨拶を、ここでも促した。できるだけいつもと同じ様子の方が恐怖心が薄れると思ったからだ。

「ママ、いってきます」

「空、いってらっしゃい」

 お母さんもそれをわかったのか、いつも通り見送った。私は軽く会釈をして「では、お預かりします」と、これもいつも通りに答える。

 先に歩き出した朝陽くんが、一番近い処置室の扉を開けて待っている。本来なら扉を閉めて治療に当たるのだが、今回は開けておいてお母さんから中の様子が少しでもわかるようにしているようだ。
< 19 / 33 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop