【中】今さら、付き合いたいなんて。
「俺はお願いしますと言ったんですよ。嫌なら結構ですが、あちらの方が話しやすいのでは?」


「チッ……」


「あーあ、芹香怒っちゃった。あんたさ、あんまムカつくことしないでくれる? 度が過ぎると“犬”にするよ」




舌打ちをして隅に移動する芹香を横目に、私は八雲くんと距離を詰めて、ネクタイをぐいっと掴んでみます。

八雲くんはパチリと瞬きすると、口元で少し笑って、私の手を上から覆いました。




「つまり、これくらいは許容範囲なんですね。お友達が待ってますよ」


「むっ……ほんとナマイキ!」




そっと手を外されて、ちょっぴり不服です。

不良はこの気持ちを我慢しないもの、と両手で八雲くんの髪をわしゃわしゃ~っと乱してやりました。


鳥の巣のようにぐしゃぐしゃになった髪を見て、私はご満悦です。
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