庇護欲強めの彼に守られ、愛されました
 私と剣崎さんも警察での説明を求められたので、一緒に署へ向かった。
 ストーカー行為の全容を聴き取った警察官が教えてくれたのだが、私が申し立てをすれば黒川に対して接近禁止命令が出せるらしい。
 心身ともに疲弊していたので、とりあえずその手続きは後日にして、今日は帰宅することにした。
 マンションまで戻ってくると、エレベーターの中で剣崎さんがそっと私の左手を取る。

「俺がもっと早くアイツを押さえていれば……本当にごめん」

 黒川が手首を掴んで力いっぱい引っ張ったせいで、その部分に今も赤く手痕が残っている。
 それを彼は自分のせいだと責めるように、申し訳なさそうに謝った。

「謝らなきゃいけないのは私のほうです。巻き込んでしまってすみません。それと、助けてくれてありがとうございました」

「せめて手当てをさせてほしい」

 大丈夫だと何度も伝えたのだけれど、剣崎さんから苦渋に満ちた表情が消えない。
 私はそれが気にかかり、これ以上彼に心配をかけないために今は従うことにした。

「入っていいんですか?」

「どうぞ」

 エレベーターを降りて自分の部屋を通り過ぎ、隣の剣崎さんの部屋へ足を踏み入れる。
 間取りはうちと同じはずなのに、雰囲気が違うとまったく別の空間のように思えた。
 ダイニングにはテーブルや椅子はなく、リビングにもラグの上にテーブルとノートパソコンがあるだけで、かなりすっきりとしている印象だ。
 どうやら最低限度のものしか置いていないみたい。

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