推し一筋なので彼氏はいりません
翌朝学校に行ったら、校門で見知らぬ2人組の女の子に引き止められた。
「菅野愛衣さん?」
「?はい。」
「昨日佐山くんと帰ってたよね?」
「そうですね。」
「佐山くんって帰る方向逆なのに、なんでわざわざあなたと一緒に帰ってたの?」
昨日微妙な反応してたけど、やっぱり帰る方向違ったんだ。
「え、そうなんですか?
多分こっち方面に用事があったとかじゃないですか?」
「そうね。佐山くんが特定の子に興味持ったりするわけないし。
それで、菅野さんって佐山くんのことどう思ってるの?」
「どうって、別に何も。」
「本当に?」
「はい。そもそも私他に好きな人いますし。」
さすがに二次元の人物を好きな人と言い続けるのに恥ずかしさはあるが、もう佐山先輩にも言っちゃってるし、この設定でいくことにした。
「そうだったの?」
「はい。なので佐山先輩を好きとかはないです。」
「よかった。
あ、ごめんね、引き止めちゃって。」
「いえ。」
一発殴られたりするのかと思ってたけど、そんなことなくて良かった。
それにしても佐山先輩ってやっぱりモテるんだなぁ。
こうやって佐山先輩のことを気になっている女子がたくさんいるというのに、なぜ先輩はわざわざ私のところへやってくるのか。
自分のことを好きにならない人が珍しいから気になってるのかな。
自分の容姿には自信あるみたいだったし。
「菅野さん、おはようございます。」
教室の前にはいつも通り佐山先輩がいた。
分かってはいたけど、今日も居るんだ。
「…おはようございます。」
「そういえば、やっぱり佐山先輩の家の方向違ったんですね。」
「知られちゃいました?
菅野さんと一緒に帰りたくて、つい嘘をついてしまいました。」
「さっき、なんで先輩と帰ってたのかって聞かれました。知らない女の子2人に。」
「なんかされてないですか!?大丈夫?」
私の言葉を聞いた途端、先輩の顔からいつものニコニコが消えて焦った顔をみせた。
「え、ないですが。」
「よかった。」
そして今度は安堵したような笑顔を見せる。
心配してくれたんだろうか。
いつもニコニコしててよく分からない人だと思ってたから、焦る様子を見て驚いた。
「あ、それで、私もなんでだろうなって思ったんですよ。
やっぱり自分の容姿に興味持たない人間がいるのが珍しいとかですか?」
「……はい?」
「だから、なんで先輩が私に興味あるのかなって。
先日聞いた話だけじゃ、全然納得できなくて。」
「えぇ、そう言われてもこの前の話が全部なんですが。」
「だって、その、ね?あんなことする人に普通興味持ちます?
というかそこだけで興味持てるのが謎です。」
「じゃあ俺は普通じゃない人ってことで。」
「確かに普通ではないかもしれませんね。いろんな意味で。」
「そうかな?」
「別に褒めてませんよ?」
「そこは褒めてるってことにしときましょうよ。
……あ、すみません。そろそろ戻らないと。
今日はいつもより話してくれて嬉しかったです。ありがとうございます。」
話すだけで嬉しそうにお礼を言ってくれる人は今までいなかった。
やっぱり普通じゃない人っていうのは間違いないかもしれない。